あらすじ

小説「メガバンク・3回目の大障害」のあらすじ

「いなほ銀行」に3回目のシステム障害の危機が迫った!
その日は2018年5月末。

いなほ銀行の定期預金システムは、定期預金通帳の未記帳が9999件までしか対応してない。そしてもし未記帳が1万件になった場合、「何が起こるか分からない」ような大変なシステム障害が起こるらしい。

この障害を回避する方法は、未記帳が1万件に達する前に、定期預金通帳を「記帳」または「再発行」し、未記帳をゼロ件にする必要がある。記帳しないかぎり未記帳が1万件に近づいて行き続けるのだ。

しかしカズトは、「父親の防犯カメラの問題」をハッキリさせない限り、いなほ銀行に協力しないと回答してきた。


よしもと新喜劇 「茂造の半沢直樹で倍返し」2013年11月4日

【説明】
カズトは期間1ヶ月の1000円の定期預金を約300口、30万円分預金している。
つまり1年で未記帳が300口×12ヶ月=3600件になる。

だから3年経たずに未記帳が1万件に到達する。

カズトは、2014年秋に250口の定期預金をあずけ、2015年初旬にローン申し込みのため記帳した。
それから少しづつ口数を増やしたので、正確な日付は不明だが、2018年5月末~6月初旬ごろに未記帳が1万件に到達するようである。

繰り返すが、現在の「いなほ銀行」のシステムは未記帳が9999を超過するケースに対応してない。

「何が起こるかわからない」とは、システム部が山田課長に伝えた言葉である。

現在の「いなほ銀行」のシステムは30年前に開発され、総プログラム数が1億行に達する。一ヶ月間に一人のエンジニアが500から800行の解読を試みると仮定した場合、1000人のエンジニアが10年間かかるような規模である。

そのため、このシステムの解読と改修は事実上不可能である。
しかし新システム「Inori(祈り)」はこの問題が解消されている。

「いなほ銀行」は新システム「Inori(祈り)」の勘定系部分だけを、ゴールデンウィークの2018年5月3日から5月6日の4日間に先行リリースできるか検討した。
しかし残念ながら本番リリースは6月にせざるをえず、定期預金の未記帳が1万件に到達する5月末にはギリギリ間に合わない。

現行システムの改修やデータ書き換えの対応も検討したが、これも事実上不可能と、システム部から回答があったそうだ。

「いなほ銀行」に3回目のシステム障害の危機が忍び寄っていた
( 2018年2月4日)

「いなほ銀行」では2016年夏にこの問題が発覚した。

そしてすぐにカズトに連絡し、これまでに4回「記帳」をお願いしてきた。

ところがカズトはずっと、「いなほ銀行」が条件を飲まないと一切の交渉に応じないと突っぱねてきた。

その条件とはこれである
(1)「いなほ銀行」の責任者の「父の墓前での謝罪」
(2)その原因である、契約者本人の防犯カメラ映像の開示の制度化

そしていよいよ2018年1月、システム障害のピンチに直面したいなほ銀行が、最後の交渉をはじめた。

【あらすじ】
2017年12月26日 山田課長から1年2ヶ月ぶりの連絡があり、カズトは年始にいくつかの手紙とメールを送った。

1月12日、「いなほ銀行」の山田課長が電話で回答してきた。
「役員の謝罪文は拒否する。通帳は、勝手に記帳する」と。

”通帳を勝手に記帳”という、まさかの山田課長の決死の覚悟にカズトは圧倒された。
そして動揺し、うっかり山田課長に譲歩した。

記帳の条件を大幅に緩和したのだ。

その条件とは、

システムの欠陥対応のため、定期預金通帳への「記帳」協力のお願いと、いなほ銀行の対応が一部不親切であったお詫びを書いた頭取の署名入り『手紙』である。
カズトはこの手紙を「父の墓前にお供えする」ことで、人生の区切りをつける決意であった。
「半沢直樹」を見習った「墓前での謝罪」と比べれば、大幅な譲歩である。

手紙自体は行員がつくるから、頭取はただ名前を書くだけである。
つまり「いなほ銀行」は頭取のサインだけでシステム大障害を防ぎ、システム部や山田課長と関連部署と金融監督庁の負担を減らすことができたのだ。

1月12日、カズトは「もう、これで終わりにしましょうよ」と言った。
山田課長もようやく安堵した表情を浮かべた。

きっと、山田課長は「これなら実現可能で、3年間のこのバカげた交渉ごとから解放される」と考えたことだろう。

1月15日の月曜日、早速、山田課長はうれしそうに本店の黒幕部長にカズトの新条件を報告した。

しかし私たちの楽観的な予想に反して、このバカげた交渉のボスであるキング・オブ・Vacaで、保身キングでもある黒幕部長は、私たちの想像を超える決断をした。

1月17日、カズトの大幅な譲歩さえも拒否するよう、山田課長に伝えた。

この決断の理由は私・小倉和人もまったく理解不能であり、このサイトの開設理由がこの時の決定理由の調査のためと言っても過言ではない。

黒幕部長が単に、これまでの自分の対応の不備が頭取にバレないように必死に隠そうとしていただけかもしれないが。

1月19日、副支店長の立会いのもと、山田課長が苦痛の表情でカズトに「いなほ銀行」としての回答を告げた。

・頭取署名の手紙の提出はいたしかねる。

・「いなほ銀行」は、顧客であるカズトの承諾と再発行申請の書類が無いまま、定期預金通帳の再発行を勝手に行う。


・これは厳密には「再発行」ではなく「記帳」である。だから「再発行」に必要な顧客の承諾と書類や、「いなほ銀行」で規定された厳密な承認プロセスは全てスキップしても問題ない。


・法務部から「通帳そのものの所有権はお客様にある。しかし、再発行してすぐに郵送するので、通帳の所有権を侵害するものではなく、法的に問題無い」との回答を得ている。

カズトは、「記帳」って言うだけですべての厳密な承認プロセスをスキップし、行員が勝手に通帳をバンバン作成できることに、大変な問題があると思った。
実際に、2月7日に三井住友銀行で行員が勝手に通帳を再発行して5億円を横領する事件が発表された。

いなほ銀行は、30%以上の行員がリストラされる。
そのとき「記帳」って言って勝手に通帳を再発行し、10億円くらいを横領して海外に高飛びする行員が続出するのではないかと心配だ。

大丈夫か みずほ いなほ銀行?

「いなほ銀行」は山田課長の決死の覚悟によって奇跡的に出現した千載一遇の絶好のチャンスを逃した!!

「顧客の承諾がない”通帳の再発行”の強行」という金融機関の凶行は、カズトには想定外であった。

1月22日、「いなほ銀行」の暴走を食い止めるため、親会社の「いなほホールディング」の社長・塩貝CEOに仲裁のお願いの手紙を出す。

ところが塩貝CEOは黒幕部長の「法務部が問題ないと言っている」という言葉を真に受け、「いなほ銀行」と黒幕部長の全面支持を決める。

そして返事を出さず、カズトの依頼を黙殺した。

キング・オブ・Vacaの黒幕部長 & ホールディングのおぼっちゃんCEOの最凶・最悪のコンビ!

ホールディングのおぼっちゃんCEOが、全く使えない社長であった

さらにカズトの証言に関与した窓口レディが突然退職した。
退社日が2月末日、2月1日を最終出社日(それ以後は有給休暇)の突然の謎の退社である。

カズトは再び金融監督庁に申し立てをする。
2016年のときは受理に数ヶ月かかった。今回はビットコイン騒動やモリカケ問題の渦中のため、受理までにさらに時間がかかると見込まれるが、ホールディングのCEOが想定を超えたダメなおぼっちゃん社長だったので仕方ない。

ここで2016年にさかのぼる。

「黒幕部長を倒した!」と絶対の確信があったカズトの2つの秘策を、黒幕部長は阻止する。 → 銀行バトル 一戦目[敗北]

1つ目はカズトと金融監督庁が仰天した、「いなほ銀行」が小学校の算数もできないという、まさかのアホ認定だった。

2つ目は、カズトと父が2年間訴えていたことを放置しておきながら、金融監督庁が一こと言っただけで、いなほ銀行が総力をあげて対応した後出しジャンケンによるものであった。

顧客第一と言いながら1番目であるはずの顧客は無視し、2番目以下の金融監督庁の言葉にはすぐに動きだす、実に汚い銀行である。

この銀行はいつになったら、顧客の声をマジメに聞くのだろうか?

2つの秘策が破れた

カズトは父の墓前で父に侘びる。

黒幕部長と「いなほ銀行」に対して、地方公務員のカズトの秘策は2本とも通じなかった。
カズトの完全敗北であった。

あれから1年以上過ぎた2017年12月26日、「いなほ銀行」の山田課長から1年2ヶ月ぶりに連絡があった。

「定期預金の未記帳が1万件になる前に、記帳の協力をお願いしたい」
「システムの改修はできてないため、現在のままだと2018年5月か6月に未記帳が1万件になってシステムが限界に達する。」
「システム部も『何が起こるか分からない』と言っている」

2016年当時、定期預金の未記帳が1万件未対応問題に対して、黒幕部長は絶対の公算があった。
4000億円を投じた世界でも例のない空前絶後のいなほ銀行新システム「Inori(祈り)」が2018年に稼働しているはずだったからだ。
黒幕部長と「いなほ銀行」の役員たちは、金額の大きさだけで根拠の無い自信を深めた。
しかし、黒幕部長の期待も虚しく、新・システムの本稼働は2018年5月に間に合わなかった。

2017年12月、黒幕部長はすっかりカズトのことを忘れていた。また山田課長もカズトも忘れかけていた。

そんなある日、「いなほ銀行」のシステム部に業務レポートが出力された。
「オグラカズト 未記帳 8000件。限界まで残り20%、2000件」と。

システム部から山田課長に連絡がいった。

そのとき山田課長の顔から、血の気が引いた。

「まさか?」

1年以上も本店から小倉和人に関する指示がなかったので、山田課長はシステム部門がシステムの対応を完了したと思っていた。
そしてシステム部門は、山田課長がカズトに未記帳1万件前の記帳の対応をとってくれたものと思い込んでいた。

「みずほ銀行」に合併したとき、当時の経営陣がITの知識がまったくなく、優れたアスカ銀行のシステムを廃止し、仕様の欠陥と問題だらけの阿呆陀羅銀行のシステムに寄せた。
そして現在の役員達が、今回の件をここまで混乱させた黒幕部長をこのポジションに任命した。

2018年1月26日(金)の夜、仲裁をお願いしたのに”いなほホールディング”が申し出を華麗にスルーしたので、カズトは最後の手段に出た。

翌日の土曜日の朝、カズトは徹夜で意識が朦朧としながら、路上の郵便ポスト前で工事現場の三角コーンを肩にかついでいた。
そして0083の1シーンを思い浮かべながらブツブツとつぶやいていた。
「チョウカン」と‥‥

⇒ 「いなほ銀行」行政処分申立書

2月7日(水)   「勝手に」通帳を発行して5億円を横領したニュースが報じられた
三井住友銀元行員の35歳女を逮捕(産経新聞)

顧客の承諾と直筆の申請書類
がない「通帳再発行」を、”金融監督庁”は「問題なし」と裁定するか?
それとも勝手な通帳再発行はNGだと「いなほ銀行」に行政指導が入るか?

カズトは再び黒幕部長に敗北するのだろうか?

あらすじ第2部(2018年5月)
山田課長が1月の電話で、「5月はじめの連休ごろに再発行して、連絡する」と言っていた。
しかし連休があけても連絡がなく、ずっと「どうしたのか?」と思っていた。

すると5月18日(金)、山田課長から電話があった。
5月の末に、勝手に通帳の再発行をする!、と。
また、その前に最後の案内を郵便で送ると。

どうやら、行政処分申し立て書によって金融監督庁から何らかの指導があり、5月の連休に再発行を強行することができなくなったようである。

当初は、3月に記帳したいと山田課長が伝えていたが、カズトが1億(マンションローン)の確定申告があるので、4月中までは絶対に認めないと主張してすでに1カ月延期されていた。今回さらに一カ月経過したので、かなりギリギリのはずである。

いなほ銀行は「勝手な再発行を強行して、未記帳1万件越えを阻止」できるか?

あるいはカズトが頭取からの「記帳のお願い」を受け取って和解するのか?

その結果はこちら
→ 「銀行バトル 二戦目[勝利]

※このサイトに掲載しているお話はすべてフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
リアリティを出すために、実在するものを加工して掲載していますが、その場合も「イメージ(= 小倉和人がお絵かきツールでつくったもの、あるいは加工したものの意)」と記載しています。

参考文献:
「システム障害はなぜ二度起きたか みずほ、12年の教訓」日経BP社 (2018/1/30 購入)
「システム障害はなぜ起きたか~みずほの教訓」日経BP社