1月22日(火)夕方、いなほホールディングのCEO個室に怒声が響いた。
「バカものー!!!!!!」
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1月22日(火)朝、監査部がカズトからの手紙を確認した。
そして、13時に塩貝CEOに報告した。
「通帳の勝手な再発行は、ヤバくないか?」
塩貝CEOは心配した。
そして監査部の斉藤に対策本部の設置を命じた。
この勘は当たっていた。
2週間後、SMBCの行員が通帳を勝手に再発行し、5億円を横領した事件が2月7日に発表された。
塩貝CEOはバンカーとしての「ヤバい」という勘を信じるべきだった。
塩貝はCEOに就任して以来、数年間で輝かしい実績をつくった。
そして3月末、晴れて退任する予定である。
「この時期に厄介なことにならなければよいが‥‥」
この時期に不祥事は絶対に避けたかった。
18時、監査部の斉藤が塩貝CEOの部屋で、対策本部の状況を報告した。
「報告が3点ございます。
1つめは、対策本部の年度表記についてです。
和暦ではなく西暦にすべきとの意見が多数を占めました。
新システムの各書類もすべて西暦表記です。
しかし前例がないので、結局は慣例にしたがって和暦としました。」
「フム」
【コラム】
例えば、みずほ銀行。
不祥事のときの文章の日付を西暦にしたら、すぐに省庁から指摘があった。
そこであわててそれ以降の文書の日付は和暦に直した前科がある。
総会屋事件の第1報の文章を、うっかり「2013 年 12 月 26 日 」と西暦表記にした。
このとき、金融監督庁から「不祥事に対する対応がけしからん!」とお叱りが。
https://www.mizuhobank.co.jp/release/2013/pdf/news131226_1.pdf
その後の文章はきちんと和暦にしている。
直後の「2014 年 1 月 17 日 」付の総会屋事件の続報は「平成 26 年 1 月 17 日」と和暦になっている。
https://www.mizuhobank.co.jp/release/2014/pdf/news140117.pdf
【コラム終わり】
「2つ目は、本部名の名称について議論を重ねました。
最終的に、内容が「いなほ銀行」のことなので、”いなほ銀行不祥事”としました。」
「そこで本部名が『平成30年いなほ銀行 不祥事 対策本部』となりました。」
「そうか……。それで?」
「3番目ですが、この調査の人件費をホールディングの持ち出しとするか、「いなほ銀行」と折半にするかの検討を進めました。」
「……」(塩貝)
塩貝は時計を確認した。すでに5時間が経過している。
報告が3点あると言われたが、まさかこれだけ?‥
監査部の斉藤が得意げに続けた。
「人事とも相談し、「いなほ銀行」に半分を請求する方向で調整したいと。」
「で?」
「以上3点のご報告です」
「バカものー!!!!!!」
「大勢の人間が5時間もかけてこれだけか?」
塩貝の怒声が響いた。
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翌日、監査部の斉藤は黒幕部長から説明を受けた。
「法務部が確認をし、頭取・役員全員で問題無いことを確認しました。
つまり『いなほ銀行』全体で問題無いことを確認済みということです」
この結果を対策本部内にフィードバックし、塩貝CEOに説明した。
塩貝は一抹の不安があったが、「いなほ銀行」は腐っても一応メガバンクである。
組織全体で「問題無し」と言うなら、大丈夫なのだろう。
カズトの手紙に、問題があれば「1/26(金) までに回答」と記載があった。
しかし問題がないため、ホールディングは回答しなかった。
カズトは、グループを統括するホールディングならきっと仲裁してくれるだろう、と大きく期待していた。
山田課長の録音CDと、聞き興し文章まで作って送ったのだ。
通常であれば、子供の問題で管理責任者の親に相談がいけば、仁義をきって「問題は見当たりませんでした」の一言くらいは回答すべきものである。
ところがこの坊ちゃんCEO率いる坊ちゃん組織は、返事さえしなかった。
いなほの常識、世間の非常識である。
まさに、この子にこの親ありであった。
この坊ちゃん対応のせいで、「いなほ銀行」からホールディングにまで問題が飛び火することになった。
そう言えば「いなほ」でなく「みずほ」でも、社会問題になっている銀行カードローンを知らんとTVで放映された全銀協の会長がいた。
2016年3月のことだった。
それから1年以上経った2017年9月に、金融庁が銀行カードローンを立ち入り検査を始めた ので、「みずほ」でも大騒ぎになった。
メガバンクは、危機管理能力がゼロなのだろうか?
それともデカすぎて身動きがきかないのだろうか??
2016/03/18放映WBS「急増!?銀行カードローン破産」(メガバンクがヤミ金)
⇒2018年1月27日(土) カズトが金融監督庁に「勝手通帳再発行」申立書を送る に続く
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